全米では約54人に1人割合で出現すると言われている自閉症スペクトラム障害。
障害の特性から、急なスケジュールの変更にうまく対応できなかったり、先生や保護者の指示がうまく通らなかったりすることもあります。
そんなとき、少しの工夫でその子にとって指示が理解しやすくなったら、お互いのストレスが減っていいですよね。
- 「今度、自閉症の子を担当することになったけど、どうしたらいいかわからない」先生
- 「自閉症の子供がうまく指示を聞いてくれない」と困っている保護者の方
に対して、
アメリカの大学院で特別支援教育について学んだこと・自閉症幼児を対象にした行動療法クリニックで教わったことをベースに、解決方法を提案します。
この投稿では、視覚支援教材のひとつである絵カードを用いたスケジュール表について紹介します。
絵カード・スケジュールを活用した指導方法
スケジュールを伝える・視覚スケジュールを活用する
自閉症の子供の中には、こだわりが強い障害の特性から、毎日同じことを同じ環境ですることを好む子も少なくありません。
決まったスケジュールや環境を持つことは、同じことが繰り返されることによって「次なにが起こるのか」わかりやすくなり、本人が安心して生活できるという面もあります。
しかし一方で、スケジュールの変化に対しては、落ち着きをなくしてしまったり、不安になってしまったりする子もいます。
- 幼稚園ではいつも10時に園庭遊びができるが、雨の日は外に出ないで室内あそびをする
- いつもは指定された席に座るルールだが、今日は席を移動して違う席に座る
そんなとき、もしその子が
- 何回も同じ質問を聞いてくる(例:「今日は外には行けないの?」)
- 部屋の中をうろうろする、または一箇所で立ち止まっている
- 爪を噛んでいる、頭をかいている
- 身体をかたくしている(例:手を固く握っている)
などの行動をしていた場合、変更されたスケジュールに不安を感じているのかもしれません。
絵で見てわかりやすいスケジュールを使って説明する
自閉症の子供は耳で聞き取った情報よりも、目で見る情報のほうが処理しやすいと言われています。その特性を利用して、私が実習を行ったクリニックでは「視覚スケジュール(ビジュアルスケジュール)」と呼ばれるものを使っていました。
視覚スケジュールは活動を表す絵が書かれたカードとそれをマジックテープでくっつけるための台紙の2パーツでできています
視覚スケジュールはその子供の認知レベルに合わせて、簡単な2ステップのもの(画像左)からより高度な複数ステップのもの(画像右)まであります。
どのスケジュールも使い方はだいたい一緒で、次やらなければいけない行動を絵で見せるのが基本です。
左の例の場合、
- 「最初に片付けだよ」といいながら、片付けのアイコンを指します。
- 「終わったらYouTubeを見ていいよ」と言いながらiPadのアイコンを指します。
- まずは、片付けに取り組ませます。片付けが終わったら「片付け」のカードを剥がす。
- 「片付けできたね、YouTubeをみていいよ」とカードを指差しながら伝えます。
右はより高度で、寝るまでのスケジュールを表したものです。
複数の作業の絵カード(作業が書かれた写真の裏にマジックテープが貼られたもの)が一列に台紙に貼り付けてあります。
- 一つの作業(例: 歯を磨く)が終わるたびにその作業の絵カードを台紙から剥がす
- 下の茶色い袋finished(=完了)と書かれた袋に入れる
- そうすることで、一番上には常に「次やるべきこと」が表示されてるようになっています。
絵カードはラミネートと呼ばれる作業をして、プラスチックのフィルムのようなものを貼り付け補強してつくります。ラミネートシートは100円均一に売っていることもありますし、アマゾンでラミネーターと専用フィルムが合わせてだいたい4000円前後で売られています。
絵カードを自分で編集して作るのは大変なので、既成のウェブサイトなどで利用して作るのが簡単だと思います。英語のサイトなのですが、無料で便利なサイトのリンクを貼っておきます。
- Do2Learn:すでに出来上がっているアイコンがたくさんあります。
- ConnectABILITY.ca:自分で写真を選んでアイコンを作ることができます。
絵カードの簡単な作り方はこちら
全米では約54人に1人割合で出現すると言われている自閉症スペクトラム障害。 障害の特性から、急なスケジュールの変更にうまく対応できなかったり、先生や保護者の指示がうまく通らなかったりすることもあります。 そんなとき、少しの工夫で[…]
iPadなどで使えるデジタル版スケジュールも
- 手先の器用さ(iPadに表示されたボタンが正確に押せそうか)
- iPadなどの端末を投げたりせず、安全に扱えるか
絵カード・スケジュールの活用 まとめ
絵カードを用いたスケジュールを活用することで、次にやることを分かりやすく説明することができます。
実際に使用するときは
- 認知能力に応じてよりスケジュールの複雑さを調整する
- 手先の器用さに応じて紙媒体かデジタル版の選択がする
など一人一人の認知能力や手先の器用さに応じて柔軟に対応すると良いと思います。
まずは、毎日必ずすること(例:寝る準備)から始めると、毎日繰り返し練習もできるのでおすすめです。