コミュニケーションを円滑にするためのお助けアイテムと言えば、絵カード。
私が働いていたアメリカの早期療育のクリニックでもよく使っていました。
自閉症の子供は耳から入れる情報よりも、目で見る情報のほうが処理しやすいと言われています。
- 療育でよく使われる絵カードだけど、いつ・どのように使えばいいかわからない
- もっと他に絵カードを使える場面について知りたい
という方に向けて、早期療育のクリニックで絵カードをよく使う場面を3つ紹介します。
私はアメリカの大学院で特別支援教育を学び、修了後に認定行動分析士(BCBA)の資格を取りました。
アメリカの早期療育クリニックにて3年以上働いた経験があります。
意思疎通をスムーズにする絵カードをもっと活用しよう
スケジュールを伝えるために使う
自閉症の子供は、自分がいま何をやればいいのか、これから何が起こるのか、わからないときに不安になりやすいと言われています。
一方で、決められたスケジュールをこなすのは得意という一面もあります。
そこでおすすめなのが絵カードを使ったスケジュールを見せながら次に行うことを教えてあげることです。
慣れてくれば、子供がスケジュールを頼りに自分で一連の動作をしてくれるので、身辺自立に繋がります。
- (車の絵カードを見せながら)「車に乗るよ」
- (歯磨きのカードを見せながら)「歯磨きの時間だよ」
というように次にやらなければならないことを伝えます。
最初は、一回に伝える事柄は1つに絞ったほうがいいですが、慣れてくれば2つ、3つと増やしていくこともできます。
- (お風呂の絵カードを見せながら)「最初にお風呂」(歯磨きの絵カードを見せながら)「次は歯磨きだよ」
選択肢を提示するために使う
自分で何かを選択することは、強制的に誰かに何かをやらされるよりも、本人が選ぶことで納得感を上げてその後の問題行動を起こしにくくなると言われています。
また、自分の好きなものを見つけて選択することは、大切なライフスキルです。選択肢を与える場面は、日常の小さなことで構いません。
- おやつのときにりんごを食べるか、バナナを食べるか聞く
- 塗り絵を色鉛筆でやるかクレヨンでやるか聞く
- YouTubeで音楽を聞くか、アニメを見るか聞く
など、小さなことから始めましょう。
最初に始めるときは、毎日のルーティンの中で子供が予測しやすい事柄(例:おやつ・お風呂など)で子供が好きな選択肢を選ばせることから始めると良いです。
選択肢が子供が通常嫌いなこと・やりたがらないことの場合(例:着替え)は、いつ始めるかを選択肢にするというのも一つの方法です。
「いま着替える?5分後に着替える?」というように、着替えることは大前提で「いつそれを始めるのか」の選択肢を与えてみるのも試してみてください。
自分の欲しい物を伝えるのに使う(AAC/PECSなど)
これは練習が必要ですが、本人が絵カードを自発的に持ってきたり・指差ししたりすることで意思疎通をはかることもできます。
以前からある紙ベースのものだと、絵カードがたくさん貼ってあるバインダーの中から、自分が欲しい物や言いたいことを探し出して大人に渡すことで自分の意思を伝えます。
現在では電子端末(iPadなど)に表示されたアイコンをタッチすることで端末が変わりに喋ってくれるシステムも登場しました。
という質問がよくあります。
声を使うコミュニケーションの代わりや補助になる方法をAugmentative and Alternative Communication(AAC)というのですが、
この研究ではAACを導入することで声を使った声を使ったコミュニケーションスキルが衰退したという例はなかったと報告しています。
またこの論文で引用された多くの研究で、AACを使うことによって声を使ったコミュニケーションが改善したということが報告されています
このことから、もしいま発語がない状態ならばAACを導入するのは発語を促進するきっかけになるかもしれません。
絵カードを使うと便利な場面・3選、まとめ
- スケジュールを伝えるとき
- 選択肢を提示するとき
- 自分の欲しいものを伝えるとき
絵カード使う場面は日常でたくさんあるので積極的に活用していくと意思疎通がスムーズになってとても便利です。
最初は慣れるまで「ちゃんと理解できているかな?」と不安になりますが、まずは慣れた日常のルーティンから導入してみましょう。